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花の贈り方ガイド
2021/09/19 10:10
■花は生き物です
花は「命ある生きもの」です。
改めて「生きている」と考えることはあまり少ないかもしれませんが、私たち人間と同じように呼吸をしています。
朝起きて、お腹が空いたら食事をし、のどが乾いたら水を飲み、夜休みます。極端に暑かったり寒かったりする環境は苦手です。
病気にだってかかることもあります。
生きているから、この世に生まれて、成長して、子孫を残して、命を終えてゆきます。
私たち人間がその命のサイクルの中で花を見て、「綺麗だな」「素敵だな」と感じ、心癒されるのはどうしてでしょう?
花は季節を感じさせてくれたり、その美しい色彩で人々を感動せてくれる存在でもあります。
■水揚げ(みずあげ)とは?
「水揚げ」とは、水を吸い上げる力を復活させる作業のことを言います。
花を持ち歩いたり、常に温かい手で握っていると花も疲れて元気がなくなることがあります。
植物は茎の切り口から水分を吸い上げますが、切り口が一度空気に触れてしまうと導管に空気が入り込み、新しい水を吸い上げられなくなります。
花市場から入荷されてきた花は、一度切り口が空気に触れ、水を切らした状態なので当店のような生花店ではこの「水揚げ」という作業を行い、花を管理しています。どの花も1本1本丁寧に行うことが花の鮮度を守ることに繋がります。
その花に合う方法で一度入ってしまった空気を追い出し、水を吸い上げる力を復活させます。水を吸い上げる力が復活し、花がピンと元気になることを「水が揚がる」、その反対で元気がなくなった状態を「水が揚がらない」または「花が下がった」と表現します。
(下葉を取る際は、花を傷めたり折らないように丁寧に行います)
切花が長持ちしない多くの原因は、切り口から吸い上げる水分と葉から蒸発される水分のバランスが崩れるからです。
花屋から買ってきた花材を長持ちさせるためには、水分や栄養分が分散しないように、不要なツボミや葉っぱを整理する必要があります。
葉が多いとせっかく吸い上げた水分が余分なところへいってしまい、水の揚がりが悪くなるので、不要な葉は極力取り除きます。
生花店では水揚げをする際にバケツに水を溜めるのですが、切り花の葉が水に浸からないように下葉を綺麗にそぎ落としてから水に入れるように行います。
下葉を綺麗にそぎ落とす理由としては、葉が水に浸かるとバクテリアの繁殖を促進させてしまい、腐敗の原因に繋がるからです。
切り花は月・水・金の週3回、花の生産者から花市場へ、花市場から花店へクリーンな状態で運ばれます。
そして、その運ばれてきた花には1本1本適切な水揚げ処理が行われ、花店の店頭に並んでいるのです。
下葉を取る際は、花を傷めたり折らないように丁寧に行います。
バケツには常に綺麗な水を溜めています。
■花バサミの正しい使い方
生花店や園芸店で使われるハサミは、普通のハサミと違い、刃の部分が短くなっているのが特徴です。
少し不恰好にも見えますが、この刃が短くなっていることで力が入りやすく、固い茎や枝ものでも問題なく切ることができます。
茎を切る時は、水を吸い上げる断面が広いほど良いので、斜めカットが基本です。
茎を真っ直ぐにカットした場合よりも斜めにカットする方が茎の切り口が広がり、より多くの水分を吸収することができます。
ハサミを切る時はゆっくりと押すように切ってはいけません。一気にパチン!! と切ることがポイントです。
理由としては、ゆっくり切ろうとすると両サイドから負荷が掛かり、茎の導管が壊れてしまいまともに水を吸い上げられなくなってしまうからです。
ですので、茎を切る際はできるだけ切れ味の良い刃で一気にスパッ!!と切りましょう。
茎を真っ直ぐにカットしたときよりも、斜めにカットしたときのほうが切り口の断面積が広がります。
断面積が広がるという事は、お花にとっては水を吸収する面積が広がるため栄養分が多く行渡り、より長生きできるというメリットがあります。
この「斜め切り」は、どこの花屋さんでも基本中の基本として知られているテクニックでもあります。
皆さんもお花をご家庭で扱うときには、ぜひこういったテクニックを活用してみて下さい。
■他にも様々なタイプの花バサミがあります
生花店や園芸店などで使用するハサミにも様々なタイプがあります。
それぞれ特徴があり、主にラッピングペーパー・リボン・ワイヤーなどを切る時に使うタイプの「クラフトバサミ」や、枝物など茎の固いものを切る時に最適な「剪定バサミ」などがあります。
剪定バサミには、長時間使用する際に手の負担を軽減させてくれるバネ式になっているものもあります。
初心者の方には、剪定ばさみよりもグリップがざらざらとした滑り止めがついたハサミがおすすめです。(※左から2番目の赤いハサミが初心者におすすめです。メーカー:坂源 さかげん)
■フローリストナイフの正しい使い方
上記でご説明したように、ハサミを使用すると両サイドから掛かる負荷により導管へのダメージが大きくなってしまいます。
そこでおすすめなのが「フローリストナイフ」と言われるナイフです。
フローリストナイフの特徴は、ハサミよりも刃が鋭く、茎を斜め横からスパッ!!と切り落とせるので、導管を潰す心配がないというところです。
そして、ナイフでカットしたほうが切り口の断面は広がります。
ですが、花バサミよりも危険で扱いにくい印象から、プロが使用する道具として敬遠する人も多いようです。安全に使うために持ち方や力の入れ方、手の動かし方など、基本的な使い方にはコツが必要となります。
ナイフに不慣れな方は、ケガをしないためにもしっかりと正しい使い方をマスターしてからチャレンジしましょう。
■一般的な水揚げの種類と方法
◆水切り(みずぎり)
「水切り」とは、茎を水の中に入れたまま花バサミで茎を斜めにカットする、ポピュラーな水揚げ方法です。
水の中でカットすることで、切り口にかかる水圧で水が揚がりやすくなります。
水圧を利用することで茎の中に入り込んだ空気を逃がしてやることができます。
水切りをスムーズにするためには、ハサミの切れ味も大きく作用します。
切れ味が悪いと、切り口がぐちゃぐちゃになり、茎の繊維を破壊してしまうので刃の部分はしっかりと手入れしておきましょう。
一般的に生花店では水揚げ処理を施した後に花を店頭に並べていますが、花を買ってきて花瓶に移し替える際などは、この水切りを行うことで花の寿命を長くすることができます。
新鮮な花材であれば、水揚げはこの作業のみで十分なのではないかというくらいオールマイティな水揚げ方法です。
◆湯揚げ(ゆあげ)
「花の茎をお湯で煮る」と言うと、少し驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、この湯揚げという方法はいろんな意味でとても効果があります。
まず、切り口を消毒してくれます。茎の先端にはバクテリアがいることが多く、お湯で煮ることでバクテリアを死滅させることができます。
そして、茎の中に入り込んだ空気を取り除く効果です。
お湯で茎の先端を煮ると、中からブクブクと気泡と呼ばれる泡が出てきます。これによって導管の空気が抜け、一気に水を吸い上げてくれます。
お湯につける時間は茎の柔らかいものはおよそ20秒ぐらいで、固いものになると40秒くらいが目安です。
また、湯気が花や葉に直接当たらないように新聞紙で包んで保護しながら行うとよいです。
◆焼き揚げ(やきあげ)
一番難しいとされている燃焼法(焼き揚げ)による効果は、湯揚げと似ています。
バクテリアを死滅させる殺菌効果と導管内の空気を逃がし水の吸収力を高める、といった効果があります。
そして、焼くことによるメリットは、焼いて切り口を炭状化させることで、元々の炭と同じ効果を発揮し水の腐敗を防ぐことができます。
切り口を焼いて行う焼き揚げという方法は、一般的にデルフィニウムやブバルディア、ユーフォルビアなど限られた花のみで行われます。
◆水折り(みずおり)
「水折り」のメリットは、道具が要らないというところです。
ハサミやナイフを使わないので切り口にバクテリアが付着しません。
水折りの方法はとても簡単です。
水中で茎の先端から2~3cmのところをポキッ!!と折るだけです。
空中で折ってから水につけても全く問題はありませんが、水中でやるほうが効果は上がります。
理由は、水中で折る方が切り口を一度も空気にさらすことなく水を吸収させることができるからです。
◆割る
枝物全般の水揚げには、割る方法が適しています。
枝の根本から縦に切断して行います。
十字に割るとより効果的です。
大きく太い枝ほど水を吸い上げる力が強く、細い枝ほど吸い上げる力が弱くなります。
サクラやモモ、ドウダンツツジなど枝物を水揚げする際におすすめです。
◆叩く
枝物など茎が固く、なかなかハサミで切れない場合などに用いられる水揚げ方法です。
茎が固い花や枝などは元々、水上がりが悪いため、叩くことで茎の繊維を壊します。
茎の繊維を壊すことで、導管が剥き出しになり、断面積が増えるので水上りが良くなる効果があります。
ですが、やみくもに叩くとかえって逆効果になります。”潰す” のではなく、”ほぐす” というイメージで行いましょう。